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独立開業
『ニーズが先行したフィギュア作りの会社』

出身地の岡山県でシステムエンジニアとして働いていたOさん(36)が、友人の誘いで京都の大型造形品を制作する会社に転職したのは、1997年の27歳 の時だった。
大型造形と云うのは知る人ぞ知る世界で、我々が何げなく見かけるのは、テ−マパークやアミューズメントに置かれている巨大なオブジェやディスプレー、テレビや映画のセットで使われている置物、建設会社や不動産会社などが地権者への説明や買い手に見せるための開発完成模型など、発泡スチロールやガラス繊維強化コンクリートを素材に精巧に作られる。精度の高い造形品になると、芸術品とも云える完成度を保っているものさえある。


Oさんは、この大型造形物を作成するため、PCを利用してイメージの作成や設計などを担当していた。性格的にもこの仕事は性分にあっているようで、夢中になって制作に取り組んでいたから、仕事に対してほとんど不満はなかった。
唯一、気になっていることといえば、自分たちが苦労して制作した作品に関して 取引先との契約とによって、他人に口外することが秘守義務によって禁じられて いたことだった。
特に、フィギュアメーカーの海洋堂の名前が、テレビを通して全国的に知られるようになると、自分たちの社名や、制作した造形品名も広く知ってもらいたい気持ちが強くなっていた。


そこで会社が決断したのは、外部へ販売可能な一般向けフィギュアの制作とIT関連の業務を併せて分離独立することだった。
03年9月、ネットを使ってのフィギュアの販売を開始。当初は、動物や置物の アイテムなど、海洋堂を意識した造形物の制作を行なったが、ほとんど反響はなし。所がOさんのアイデアで、結婚するカップルに似せたオリジナルフィギュアを売り出すとこれが大当たり。
Oさんは押し出されるカタチで独立開業をして、新しい会社の代表となった。04年9月のことである。


子どもから大人まで収集熱が高まっているフィギュアの世界は、その制作のほとんどを中国などの低賃金国に頼っている。一度型さえ作れば、幾らでも大量生産できる商品でけに、そこは致しかたのないところ。
所が、Oさんの会社の生産システムは、職人の手による個体生産がほとんどだ。思い出をカタチとして残そうとするフィギュア作りを目指すだけに、現代版の日本人形づくりに通じる心の篭もったモノづくりの精神を活かしたい。
そこで考えられた制作法は、お客さんから預かった写真を基に、何度か連絡を取りながらのオーダーメードのフィギュア制作だ。
価格も、カップルをフルオーダーで作ると10万5千円と高額ながら、この先一 年近くは注文が埋まってしまうほど大変な人気になっている。


Oさんは、決して初めから起業を考えていた訳ではないが、自分の思いを実現させようとした結果が起業というカタチに結びついた。
そして、自分たちの行なっている仕事を広く知ってもらうことが、他方ではお客 さんの広い需要に結びつく幸運な仕事の展開である。
ただ、ここで見落としてならないのは、Oさんの会社のフィギュア作りの技術が質の高いアナログ技術で、それとデジタル技術が結びついたとき、他の企業からは容易に真似のされない製品を作ることが出来ることである。
どこまでお客さんの高い要求に応えることが出来るか、ニーズの変化についていける会社だけが生き残れる時代になりそうだ。 


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