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　　　　　　 　　　　　　　『 起業には、団塊より上のシニア市場 』

　　　　　　　　　　　市場は、０７年から大量の定年退職者が出る、団塊の世代に注目が集まって
　　　　　　　　　　いる。約７００万人が、多額の退職金と持て余す時間を両手に、消費市場に参
　　　　　　　　　　加してくるとされているからだ。
　　　　　　　　　　　その実際問題は別にして、団塊世代を対象にした市場は、顧客ターゲット不
　　　　　　　　　　足に悩んでいる大企業や中堅企業にとっては、久々の大型ターゲットとして、
　　　　　　　　　　事業部やプロジェクトを立ち上げて市場参入している企業が多い。

　　　　　　　　　　　これから起業を目指す起業家の中にも、少子高齢化が進むわが国では、団
　　　　　　　　　　塊世代を対象にしたビジネスがこれからのビジネスと、参入を計画している人
　　　　　　　　　　も多い。
　　　　　　　　　　　大企業からこれからスタートを切る起業家まで、団塊の世代をターゲットにビ
　　　　　　　　　　ジネを行なうのだから、勢い競争は激しいものになる。
　　　　　　　　　　　しかも、団塊の世代といえ、みんながみんな退職金と時間を両手に消費市場
　　　　　　　　　　に参入するわけではなく、予想を大きく裏切る可能性さえある。

　　　　　　　　　　　そんななか、証券市場への上場を果たした、中高年市場をターゲットに事業
　　　　　　　　　　を拡大してきた二つの会社がある。
　　　　　　　　　　　一社は、０５年１２月にマザーズに上場したシニアコミュニケーション。長銀出
　　　　　　　　　　身で外資系コンサルタント会社に勤めていて、そこからネットビジネスのシニア
　　　　　　　　　　コミュニケーシャンを２０００年に山崎伸治会長（３６）が起業した会社である。
　　　　　　　　　　　業務の内容は、ネットを通じてシニア会員を募り、彼らを対象に市場調査、戦
　　　　　　　　　　略立案サポート、芋焼酎やワイン、書籍、レストランなどの事業開発を、相手企
　　　　　　　　　　業の依頼で行なっている。
　　　　　　　　　　　この会社の場合、ネット環境があって、それを使うシニアの参加ということで、
　　　　　　　　　　５０歳代を主力に６０歳代までの人を対象としている。

　　　　　　　　　　　もう一社は、００年９月に東証２部に上場を果たしたニッコウトラベルである。
　　　　　　　　　　この会社、久野木和宏会長（６０）が１９７６年に起業した会社で、設立当初は
　　　　　　　　　　広告代理店だった。たまたま台湾ツアーのイベント企画があたって、次第に旅
　　　　　　　　　　行代理店へと姿を変えていき、２０年前からはシニアを中心にしたツアーに特化
　　　　　　　　　　した海外パッケージ旅行の企画販売を行なっている。
　　　　　　　　　　　ここでのお客さんの平均年齢は７１歳、顧客ターゲットも６０代後半からに絞っ
　　　　　　　　　　ている。

　　　　　　　　　　　この二社の０６年３月期の決算を比較すると、
　　　　　　　　　　シニアコミュニケーションは、従業員４１人、売上げ１１億６千万円、経常利益２
　　　　　　　　　　億２千万円、純利益９千万円、有利子負債４億円。
　　　　　　　　　　ニッコウトラベルが、従業員８３人、売上げ４９億円、経常利益４億６千万円、純
　　　　　　　　　　利益２億７千万円、有利子負債０円。
　　　　　　　　　　　一目瞭然で、ネット業者に顧客を奪われて苦戦しているはずの旅行会社が、
　　　　　　　　　　身軽な経営で財務内容のよいはずのネットビジネスの会社よりも、優秀な財務
　　　　　　　　　　内容を示している。
　　　　　　　　　　　設立後の日の浅さを勘案しても、財務の違いは歴然としている。

　　　　　　　　　　　６０代以上のシニア市場の特徴は、顧客ロイヤルティーが高いことにある。若
　　　　　　　　　　い人たちと違い、一度顧客になって商品やサービスに良さに納得すると、元気
　　　　　　　　　　な限り愛用してくれる。
　　　　　　　　　　　また、口コミによる横のつながりが強いことで、広告宣伝に大きな費用を使わ
　　　　　　　　　　なくても、人集めが可能な点も上げられる。
　　　　　　　　　　　しかも、若い世代の場合は、常に新商品や新企画などリニューアルが求めら
　　　　　　　　　　れるが、その辺の心配は少ない。
　　　　　　　　　　　ビジネス界の目は団塊世代ばかりに向けられているが、その上にホットな市
　　　　　　　　　　場をあることを忘れてはならない。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
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