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                起業を目指す人のための転ばぬ先の起業講座

          


              『 村上ファンドが残した起業家への教訓 』 

           わが国の最も有名なファンド・マネージャ の一人で、広く資金運用としての投
          資信託の有効性を訴えている、さわかみ投信の澤上篤人氏が日頃から口にし
          ていたのは、「村上ファンドは、市場のひずみに大量資金を投入する手法だか
          らひずみがなくなるとその存在価値がなくなる」。
           2000年代前半の村上ファンド発足当初は、資金残高も40億円と額が少なく
          影響力もほとんどなかった。所が、今は100倍の4000億円もの資金が集まっ
          て影響力は強くなる一方なのに、ひずみを抱えた投資先企業が限られてきて、
          結局ニッポン放送株の売買を巡って存在価値がなくなることになった。
           投資ファンドは、企業価値を高めることで株主価値を高め、結果的に株主へ
          の利益を高めることを目的にしているので、その軌跡は起業家にとっても参考
          になる事柄が多い。村上ファンドの失敗の軌跡を検証してみようと思う。

           まず、起業家にとって一番気になるのは、インサイダー取引によって一発逮
          捕されたことではないだろうか。以前なら、公取委からインサイダーの疑いが
          あると警告が発せられた上で逮捕になった。
           特に、対象企業の内部情報に詳しい関係者以外の人間が、インサイダー取
          引の対象になるとは、ほとんどの人が知らなかったのではあるまいか。
           自動車の違法駐車に対して、民間監視員による警告なしの一発逮捕の制度
          が6月1日からスタートしたが、同じような動きは談合事件においても、銀行の
          不正行為においても、消費者金融においても起こっている。
           官庁から出される省令などの事前規制による業界のコントロールから、司法
          による事後チェックへとコントロールの方法が変わった。
           構造改革によって企業の自由が広がる一方自己責任によって法令違
          反は厳しく責任が問われる法化社会に姿を変えている。
           起業家にとっても、これまでは軽い処分だった違反行為が、これからは企業
          の命取りになりかねないので、起業にあたっては事前の十分な調査と、コンサ
          ルティングへの相談は欠かせなくなった。

           次に、村上ファンドの特徴に、非常に短期間に組織の拡大を図ったことが挙
          げられる。発足から約7年で100倍の資金残高を記録し、その間の利益も20
          00億円に上っている。
           村上ファンドの手法は、含み利益や資産を過大に抱える会社に対し、株主へ
          返還を求めることでひずみの是正を迫り、株主配当が増えそうだと一般投資家
          が買いに入ったところで売り抜ける。
           たまたま、日本経済の失われた10年と云われる90年代の後の、株価上昇
          期と、村上ファンドの活躍期とが重なったために短期間の急成長が可能になっ
          たが、起業においてこの短期間の急成長は、絶対に避けなければならない事
          態だ。短期間の急成長には、必ずそのあとの反動が待ち受けている。それは、
          資金であったり、人の問題であったり、在庫であったりするが、例外なく痛いしっ
          ぺ返しを受けることになる。
           起業の目的が息の長い成長を維持して企業を大きくする「ゴーイング
          ンサーン」である以上、急激な成長につながる要因ははじめから取り除い
          ておかなくてはならない。

           村上ファンドは、村上世彰氏のキャラクターを抜きには語れない。その村上氏
          が、ファンド資金の急拡大に伴って、当初のミッション(使命)から変節していた
          ことが逮捕後に報道されている。
           多分に資金の集まりが潤沢になったために、投資対象の企業のひずみも大
          きなものにならざるを得ず、ニッポン放送、阪神電鉄、TBS への走ることになる
          が、それにともなってマスコミへの露出も多くなっていった。
           わが国では、村上ファンドと同様に企業のひずみをテコに株主利益を最大化
          させようとする投資ファンドとして、スティールパートナーズがよく知られている
          が、その投資手口については市場でも誰も伺い知れない。
           米国においてビル・ゲーツに次ぐ金持ちは、投資家のウォーレン・バフェットで
          あるが、彼は昔からほとんどマスコミに登場することがない。彼のメッセージを
          知るのは、彼が会長を務めるバークシャー・ハサウェイ社へ出資をしている投
          資家へのビジネスレターを通してである。
           ファンドマネージャーと云う職業は、賢明な上に慎重で、そのうえ世論を常に
          見方につけることを慣わしとしてきた。村上氏は大きな目を剥いてマスコミに登
          場することで、司法当局の介入を招いてしまったとも云える。
           これは起業家にも同じことが言えて、マスコミとまでは云わなくても、周辺や
          同業の人に景気のよい話しばかりを吹聴していて税務署の調査を受け
          るケースが非常に多い
           口は災いの元とは、テレビカメラの前でも、街中でも変わりはないようだ。

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